部活動の運営が「顧問の熱意」に依存しており、持続性がない。部活動にかける時間や労力は教員によりけりであり、ICT活用や探究学習など天井のない「定額働かせ放題」の現状になっている。部活動における「安全配慮義務」に対する社会的要求の増加は教員の負担感に拍車をかけている。そこで本校では学校全体で組織的にマネジメントし、顧問就任が「選択可能」である部活動運営の構築を目指している。その取り組みを紹介する。
実施日時
2022年8月7日(日) 13:20 – 14:20
プログラム紹介
本スキームを職員会議で提案した際、積極的に部活動を「やりたい」という教員からは反対の声が上がったが、「顧問業務を奪う」のではなく「選択可能」なシステムであることを丁寧に説明した。
従来、参加費無料であった部活動に金銭的負担が発生すること、つまり「サービスから受益者負担へ」の移行に対して理解を得るべく保護者会を開催。現状のままでは本校だけでなくわが国の部活動の体制さらには教育システムの破綻の危険性もあることを伝えて理解を得た。
本スキームのαテストとして先行導入する部を選定。初年度の2020年度は2つの部(高校サッカー、中高卓球)で導入。コロナウィルス感染拡大による休校措置のため、当初の予定から4ヶ月遅れて7月から本格始動。また、指導員のみの引率で日曜日の練習試合を含む校外活動が11月から可能になった。そのため、教員の日曜出勤の回数が大幅に減少した。このαテスト期間中は指導員費用を学校で全額負担。
βテストとして、2021年度は高校サッカー部と中高卓球部の保護者から指導員の費用を徴収し、また新規に中学サッカー部、中学野球部には指導員制度を導入して適用する部を拡大した。
現時点では本スキームを適用している部は5つあるが、顧問の働き方は劇的に変わった。時間的余裕だけでなく、精神的な負担の軽減にもつながり、それが本来の業務である授業づくりや学級運営、具体的には放課後の生徒や保護者面談の時間の確保、教員が職員室にいることによる生徒教員間のコミュニケーション場面の増加など、様々な点で効果を見せている。
この取り組みを通して教員、生徒、保護者ひいては日本社会がずっと抱いてきた「学校の当たり前」を問い直す機会となっている。オープンソースとして、他校への本スキームの紹介(どこの学校でもカスタマイズできることを前提に作成)を行なっており、色々な学校と協働しながら、進めていきたい。
登壇者
- 日野田昌士 先生(聖学院中学校高等学校 総務統括部長(教頭))
- 高橋孝介 先生(聖学院中学校高等学校 高校生徒会顧問・国際教育部長)
参加者へのメッセージ
中学校の部活動の休日の地域移行の方向性が確認された中、今後、部活動のあり方の見直しは加速するものと考えられます。
色々な方にご参加いただき、皆さんで「部活動とは何か?」「これからの学校はどうあるべきか?」を考えていきたいと思っています。